医療の進歩に思うこと

略歴
昭和52年3月 金沢大学医学部卒業
同年   4月 同大学(旧)第一内科入局
昭和58年4月 ロンドン大学キングスカレッジ病院
肝臓教室に1年間留学
昭和60年10月 富山労災病院内科
平成14年4月 富山県立中央病院 内科部長
平成24年4月 富山県立中央病院 院長
平成29年4月 富山県済生会高岡病院 院長
令和4年4月 富山県立イタイイタイ病資料館館長
富山県済生会支部 支部長

以前は富山高校が目の前の太郎丸に住んでおり、幼少の頃から高校の敷地内で夏休みはラジオ体操や蝉取り、休日は野球などをして遊んでいました。昔はのんびりしたもので、遊んでいて学校側から注意された記憶がありません。高校時代は、予備チャイムが鳴ってから走って行けば授業に間に合うくらいでしたので、先生からは登校時刻と通学距離とは反比例しているとよく叱られたものでした。そういう甘えもあり、1年浪人し金沢大学医学部に進学しました。

卒業後は、母校の金沢大学医学部(旧)第一内科に入局し、消化器・肝臓研究室に入りました。当時は、CTやMRIまた超音波などの画像診断機器はなく、問診・触診・聴診と簡単な検査のみで、医師は経験がものをいう時代でした。現在は、経験的医療から科学的根拠に基づく医療となり、診断と治療は飛躍的に進歩しました。

医療の進歩を挙げれば枚挙にいとまがないほどですが、私の専門分野でエポックメーキングだったこととして二つ挙げるとすれば、まずは、ピロリ菌の発見です。この発見により、胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍そして胃がんの原因に感染症の概念が取り入れられました。当時は、誰もこれらの病気が感染症だとは考えていませんでしたので大変な驚きでした。ピロリ菌を除菌することにより、潰瘍の再発予防や胃がん予防にも繋がっています。つぎに、治療が難しかったB型肝炎やC型肝炎において、それぞれのウイルスの発見から時間は要しましたが、安全でかつ有効な経口の抗ウイルス剤が開発されたことです。これにより、ウイルス性肝炎とそれに伴う肝がん撲滅も夢ではなくなってきました。
最近のこととしては、新型コロナウイルスmRNAワクチンの開発・製造から実用化までのスピードに驚かされました。mRNAワクチンの基礎研究は以前よりなされていましたが、新型コロナウイルスの全ゲノム配列が報告されてから、米国では莫大な資金を投じてこのmRNAワクチンをわずか10か月という短期間で実用化しました。mRNAワクチンは、ウイルスを増殖させて作成する生ワクチンや不活化ワクチンと比べ、安全性を担保しつつワクチン製造プロセスを大幅に加速できることを証明しました。新興感染症に対するワクチン100日構想も現実味を帯びてきました。

富山高校を卒業して早や半世紀以上経ちましたが、アナログからデジタルの時代へ、そして現在は第四次産業革命時代と言われています。AIやITの進展、ゲノム・個別化医療や新薬開発等の進展など医療はますます進歩すると思われ、二人に一人が百歳まで生きる時代が来ると言われています。その一方で、生と死に医療がどう関わるべきかの生命倫理の問題は、今後ますます重要になってくると思います。

私自身は、病院で内科医としての仕事も継続しつつ、令和4年4月より富山県立イタイイタイ病(イ病)資料館に勤務しております。世の中は医療以外でもすべての面で急速に発展していますが、一方で、産業優先による悲惨な公害の歴史も忘れてはなりません。富山県においては、四大公害病の一つであるイ病があります。カドミウム汚染とそれに伴うイ病の歴史と教訓が風化されないよう次世代に伝承していかなければならないと思っております。本年度は、資料館開設10周年の節目の年です。当資料館は、環境に配慮した持続可能な発展目標(SDGs)を考える上でも重要な施設と思っております。機会があれば、ご来館いただければと思います。

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