貼薬との出会い

略歴
昭和28年  富山大学薬学部卒業
同      立山化成株式会社入社
昭和31年  立山化成株式会社退社
 同     株式会社東京広栄堂入社
昭和44年  株式会社東京広栄堂退社
 同     リードケミカル株式会社設立

この度、私の永年の研究テーマであります鎮痛消炎剤領域での薬物療法として副作用が少なく皮膚を介して直接患部に有効成分が到達する経皮吸収貼付剤の発明考案の功績に対し、はからずも黄綬褒章拝受の栄に浴しました。これも偏に各界に亘る数多くの皆様方の温かいご支援ご指導の賜物と感謝いたしておりす。

私が貼り薬と出会ったスタートは、中沖太七郎先生(前中沖知事のご尊父)の生薬学の門下生としてベルゲニンの化学構造式の研究に没頭した富山大学時代か立山化成を経て広栄堂に入社した時期に遡ります。

当時、消炎鎮痛成分が果たして皮膚を通して体内に入るかどうかは全く不明であり、この疑問に対するヒントになったのが農薬パラチオンの中毒事件でした。呼吸からではなく、裸足で田んぼに入り、皮膚から農薬が体内に入った事件で、田んぼの水により角質がふやけて農薬が入りやすくなることから、貼り薬に水を加えればいいと考え、さらに薬品によって皮膚から入りやすいものと入りにくいもがあるのではないかと考えたことが、経皮吸収型鎮痛消炎剤の発明考案の原点となりました。

いろいろ実験を重ねた結果、英国ブーツ社が開発した有効成分フルルビプロフェンが消炎鎮痛剤として非常に強力であり皮膚からの浸透性も高いことが分かり、また皮膚から直接患部に作用するので飲み薬のように胃腸障害などの副作用の心配がないことが分かりました。当時とすれば、皮膚から浸透させるやり方は極めて画期的な方法だったわけです。昭和57年フルルビプロフェンのパップ剤承認を厚生省に申請しました。ところが、前例がないということで保留となってしまいました。しかしながら、その後アメリカでも宇宙飛行士が酔い止め薬を貼付しているという情報が厚生省に入り、ようやく当局も前向きに検討を始めました。その後紆余曲折を経て、昭和63年3月フルルビプロフェンの経皮吸収型鎮痛消炎剤である当社初の新薬「アドフィード」が承認されました。

このアドフィードは、平成3年には英国ブーツ社とライセンス契約を結びヨーロッパへの輸出も開始することになりました。当時アドフィードが爆発的に売れていく中で、私は併行して三共から提供されたロキソニンの研究を続けていました。ところが三共側が「ロキソニンは肝臓の酵素がないと駄目らしい」とトーンダウンしてしまいました。

それでも私は執念をもって諦めずにロキソニンの研究を続け、ようやく皮膚および皮下の筋肉中にも肝臓と同じ酵素があり、貼り薬としてもロキソニンが鎮痛効果を発揮することを発見しました。 薬剤としての研究、臨床試験などを経て、ついに平成15年「ロキソニンパップ100mg」として承認を申請し、平成18年1月に承認されました。 経皮吸収型製剤の可能性はまだまだあります。皮膚の薬物透過性をもっと厳密にコントロールできれば、様々な発作の予防に応用できますし、患者さんを点滴の拘束から解放してあげることも可能になります。

私は常に化学構造で考える習慣がついているのですが、この六角形の化学構造式から夢が現実となっていくのは、いくつになってもわくわくするものです。これからも貼り薬との出会いを大切にし「吾道壱以貫之」を信条として、新しい薬の発見に挑戦し続けていこうと思っています。

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